公開イベント

市民公開講座

生物進化学の最前線「生き物の進化を“視る”」

とき:2019年8月10日(土) 14:00〜16:40
ところ:北海道大学 学術交流会館 講堂
共催:新学術ヤポネシアゲノム

参加費無料
*小さなお子様連れのご来場も歓迎します。ただし小学生以下は保護者同伴とします。

 

「ゲノム倍数化による進化:人類がつくった新種の作物植物を例に」

チューリッヒ大学 清水 健太郎 博士

全ての遺伝子(DNA)が二倍に増加する「ゲノム倍数化」は、進化の重要な原動力である。パンコムギ、ダイズ、アラビアコーヒー、ジャガイモ、サツマイモ、バナナなど、我々が日常口にする作物の多くは、この倍数化が比較的最近おきてできた種である。とくに世界三大穀物の一つであるパンコムギは自然界には存在せず、新石器時代の栽培化の過程で人類が生み出した「新種」である。倍数化した植物は、分布域が広がったり個体が大きくなる傾向があるため、倍数化は環境耐性や収量を向上させると考えられてきた。ゲノム倍数化は、植物だけでなく、動物や菌類でも普遍的にみられる。アメリカで活躍した日本人研究者大野乾(すすむ)は、ヒトを含む脊椎動物の多様化にも倍数化が貢献したことを約50年も前に提唱した。本講演では、倍数化と進化の関係について、最近のゲノム科学による新しい知見を交えて紹介したい。

「現代生物学の視点でみる種の起源」

首都大学東京 高橋 文 博士

地球上には多くの生物種が存在しているが、どのようにして多様な種が形成されてきたのかは、現代に至っても生物の進化に関する研究の中心的な課題の一つである。19世紀の生物学者、チャールズ・ダーウィンが考えた環境への適応が多様な種を生み出してきたという「種の起源」の背景となるしくみの詳細は、どのくらいわかってきたのか。遺伝子やゲノムDNAレベルでの種の起源とはどのようなものか。近年、種が分かれていく過程で起きたDNA塩基配列の変化が少しずつ明らかになってきたことで、ダーウィンが想像もしなかったようなダイナミックな進化の動態によって、種が分かれるような変化が起こってきたこともわかってきている。DNAレベルでの進化の詳細を明らかにするための遺伝学に適した材料であるショウジョウバエを中心に、いくつかの動物の例を用いて、現代の生物学で明らかとなってきた種の起源について概説する。

ゲノムからさぐる日本列島人の歴史

国立遺伝学研究所 斎藤 成也 博士

日本列島は、北から南まで数千kmにわたって大陸の東に位置しています。奄美大島に長く住んだ作家の島尾敏雄が、日本(ヤポ)と島々(ネシア)をあらわすラテン語から、ヤポネシアという言葉を提唱しました。旧石器が発見される地層の年代から、およそ4万年前にはこのヤポネシアに人々が住み着きはじめたことが知られています。旧石器時代から縄文時代までヤポネシアに住んできた採集狩猟民(象徴的に「縄文人」)と、弥生時代以降の稲作農耕民(象徴的に「弥生人」)の2種類の人々の混血によって現代ヤポネシア人が成立したという「二重構造モデル」が定説でした。北のアイヌ人と南のオキナワ人には、たしかに遺伝的な共通性が見られます。ところが、膨大なゲノムDNAのデータを解析した結果、私は数年前に、ヤポネシア中央部のヤマト人にもうっすらとしたゲノムの地理的な違いがあることに気づきました。そして提唱したのが「うちなる二重構造」であり、三段階渡来説です。講演では、この新しい説を中心にお話しします。